「湯気」の凄さ
「湯気」は、「水蒸気」が冷やされ、私たちの目に見える状態になったものです。「水蒸気」は、水が蒸発した、「気体」の状態です。湯気は気体ではなく、水蒸気が冷やされて、私たちの目に見える状態になったものなのです。水蒸気は「気体になった水」なので、通常は私たちの目には見えません。
水は摂氏100度で沸騰するのですが、不思議なもので常温、常圧でも一定量は空気中に存在でき、また自然界においても存在しています。それがいわゆる「湿度」で示される大気中の水分なのです。「湯気」は、水蒸気として気体になった水分、或いは空気が暖められて含有できる水分の量が増加していた大気が、冷やされることによってその「水分が凝固したもの」となります。白く見えるものは、凝固した液体としての水なのです。
ややこしいように感じてしまうかもしれませんが、似た例として「雲」が挙げられます。雲は「気体の水」ではないのです。水蒸気と同じように凝固した液体としての水が、拡散して空気中に漂っているのです。「霧」も同じです。水蒸気は気体の水分であり、目には見えません。私たちに必要なのはこの「目には見えない気体としての水」です。それが潤いの源なのです。
ですが、私たちの周囲に存在する気体は摂氏100度ではありません。「水は摂氏100度で沸騰し、気体になる」と教わったものですが、100度ではなくても私たちの周囲に気体として存在していることになります。これは水が「自然蒸発」するからです。空気に触れ合った水は、空気と衝突します。そのことで、分子レベルで水の水分としての結合を壊すようなエネルギーが働いているのです。そのことによって、水は摂氏100度でなくても気体として大気中に蒸発していきます。つまり、水分をより多く蒸発させるためには、空気とより多くの面積触れ合わせればいいのです。
「湯気」は、この条件に対して最適な状態です。湯気にとっての空気と触れ合う「水面」は、空気中に漂う水滴のすべての面ということになります。湯気がそのまま空気に融け合っているように見えるのは、拡散していることも理由としてはあるのですが、実はそのまま「蒸発」しているということでもあるのです。ですから、湯気は私たちにとって潤いそのものなのです。
空気は温かいほど多くの水蒸気を内包できます。コーヒーカップから立ち上がる湯気は、コーヒーカップに近いところで沢山水分を含んだ空気が上昇するごとに冷やされ、水分が最凝固した形です。一旦は沢山の水分を含み、温度が下がるにつれてその飽和量を超えて再度液体として凝固したということです。逆に、冷たいグラスに水滴がつくのはその逆です。グラスに触れ合う空気の温度が急激に下がり、空気中の水分を凝固させ、グラスに結露しているのです。
これが水分と大気の関わりの根本です。これを応用すれば、私たちは空気に水分を補給することができるのです。そして、その原理を応用したのが「加湿器」です。理想的な状態が「湯気」です。私たちの周囲の空気に潤いを与え、私たちに潤いを与える「湿度」を生み出す基本原則です。湯気の周囲は湿気を感じます。つまり「湿度」が高いということなのです。それが理想的な空気への水分補給です。乾燥した冬の空気を改善する方法なのです。